国内仮想通貨市場に深刻な危機感、ビットコイン(BTC)のレバレッジ2倍規制問題で

/ 11月 22, 2019/ NEWS

BTCのレバレッジ2倍規制をめぐり議論

国内仮想通貨取引所の「BTCレバレッジ規制」をめぐり、金融庁の狙いは「レバレッジ上限2倍」と報じられたことで、大きな議論を巻き起こしている。

現在は、金融庁認定の自主規制団体「JVCEA(一般社団法人日本仮想通貨交換業協会)」が、仮想通貨のレバレッジ上限を15倍から4倍に引き下げるルールを定め、正会員としてJVCEAに所属する各仮想通貨取引所がこれを適用した経緯がある。

金融庁の審議会で、『アフター・ビットコイン』の著者であり、日本銀行、国際決済銀行(BIS)など出身の中島真志氏は、以下のように主張した。

この点について、個人投資家らから反対意見が噴出。金融業界に精通する仮想NISHI氏らが真っ向から反論した。

国内における過度な証拠金取引規制は、金融庁の掲げる「利用者保護」の観点から逆効果であるとし、低レバレッジ・追証ありの危険性を指摘する。

ゼロカットシステムの必要性

前提として、通説にある「高レバレッジ=危険」という認識は誤りで、BitMEXのような「ゼロカットシステム」が搭載されれば、個人投資家の預け入れ資産を大幅に超える、追証リスクが解消される。

追証とは、口座残高を超える借金のようなもので、株式市場でも信用取引で追証が発生するリスクがあるが、とりわけボラティリティ(市場変動性)が高く、伝統金融市場と比較して未成熟なBTCFX市場では、そのリスクがより大きい。

信用維持率が一定基準を下回った場合に発動する強制ロスカットは、必ずしも絶対ではない。急激な相場変動でトラフィック急増によるサーバー遅延やサーキットブレイカーが発動した場合、ロスカットが間に合わず個人投資家の保有残高がマイナスになるようなケースがあり、支払い能力を超過する場合はさまざまなトラブルが起こり得る。

ゼロカットシステムは、その損失分を業者側が負担して口座残高をゼロにしてくれる仕組みだ。その原資にあるのが証拠金取引手数料などで、世界最大級の仮想通貨デリバティブ取引所として知られるBitMEXでは、独自に保険基金制度を設けている。

仮想NISHI氏は、「保険金積立の運用上ゼロカットにするには、20倍程度以上の倍率にする必要がある」と言及。高レバレッジの仕組みについて、一概に悪影響と断じるのは早計だとした。BUIDLのBlockchain Researcherを務めるKanaGold氏は、検証データを元にレバレッジ上限4倍程度が適切ではないかとしている。

懸念される流動性低下リスク

xKeiki氏は、金融庁が投機熱の高まりを懸念していることを念頭に冷静な見方を示す一方、「低レバレッジでもゼロカットシステムが無ければ、相場に追い込まれ『追証』に巻き込まれるリスクも高い」などと指摘している。

市場流動性の枯渇は、”取引板が薄くなる”という直接的な悪影響をもたらし、一部大口の相場操縦による急激な相場変動が起きやすくなるなど、市場健全性と相反するファクターだ。

流動性と各金融市場の魅力は密接な関係があり、イノベーションを軽視していると映れば、一定程度まで成長した仮想通貨・ブロックチェーン関連の新興産業の衰退と、有望企業の海外流出による中・長期的な国力低下にもつながりかねない。

ただでさえ出来高の急減する日本仮想通貨市場の締め付けを必要以上に厳しくすることで、管轄外の海外取引所に、本来保護対象となるべき日本人投資家の大勢が流れるリスクがあり、本末転倒だ。

また、事業としての成立が困難になれば、顧客保護の仕組みは元より、サービス拡充も困難を極める。

大手企業の参入障壁が極端に高まり、既存事業者の撤退・移転を余儀なくされるなどすれば、国内新興産業の空洞化を招きかねず、新興技術を支援する他国に大きく遅れを取る恐れがある。

立ち上がる事業者

過度な規制が続けば、仮想通貨取引所にとっては死活問題になりかねないが、2018年以降に国内で相次いだハッキング事件、および金融庁による業務改善命令などの影響で、事業者側が弱い立場にあることも否めない。

そんな中、株式会社bitFlyer Blockchainの加納氏はこの件について問題提起。利用者の意見を規制当局に届けるとしている。

欧州(EU)の規制は、欧州証券市場監督局(ESMA)が発表しており、日本の規制とは必ずしも一致していない点についても言及した。

今年5月、参議院で資金決済法と金融商品取引法の改正法が可決・成立し、2020年4月から施行される予定となっており、今回の証拠金取引規制の議論もその一環だ。

金融庁を中心とした、「建設的な議論」が望まれる。

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