大口仮想通貨投資家が移行 デリバティブのDeribitが開発協力した投資専門メッセージアプリが誕生
- チャット機能を備えた新プラットフォームが誕生
- 仮想通貨デリバティブ市場に新たな投資ブラットフォーム「Paradigm」が誕生。ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のオプション取引と先物取引で、大口の売買ができ、OTC取引のスタンダードもTelegramから変わりつつあるという。
デリバティブ取引を自動化
仮想通貨デリバティブの投資家が、メッセージアプリTelegramの利用をやめて、新たなトーレディングプラットフォーム「Paradigm」を使い始めているという。
Paradigmは、メッセージのやりとりができる、仮想通貨トレーダー向けのプラットフォームで、OTC取引用に設計されている。仮想通貨デリバティブの取引所Deribitの協力を得て、8月22日にローンチされた。
Paradigmでは、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のオプション取引と先物取引で、大口の売買ができる。それに加え、チャット機能が搭載されている。まだ新しいプラットフォームだが、シンガポールを拠点にするQCP Capitalと仮想通貨マーチャント・バンクのGalaxy Digitalに利用するよう申し出ており、QCP Capitalでトレードのテストが実施された。
Paradigmは、石油やガスのOTCトレーダーだったAnand Gomes氏が設立。市場でトレードを行う際の、自動化されておらず、かつ透明性が欠如しているという問題点を解決することを、設立の目的としていた。
Telegramとの比較
トレーダーが仮想通貨デリバティブの取引で、OTC取引などに関わるコミュニケーションに使うのはTelegramが多い。事実、業界の情報筋によれば、OTCでの全オプション取引の約半分が、Telegramの1つのグループチャットを通して行われているという。そこには複数のトレーディンショップが含まれている。
トレードをする際は、Telegramのグループチャットを使い、手動で価格を申し出る。興味を示す相手がいれば、プライベートチャットに切り替えて取引を実行する流れだ。こういった今までのトレード方法は、伝統金融商品の投資家も活用しているとGomes氏は説明している。
一方Paradigmは、Telegramと似てはいるが、自動化機能を搭載した。トレーダーがParadigmのチャット機能を使ってメッセージを送り、契約成立を求めて金額を伝えると、自動的に提示金額を示してくれる。価格やトレード数量が双方で同意されれば、Deribitで取引も自動で実行される仕組みだ。トレーダーは、直接取引所とやりとりをする必要がない。
QCP Capitalの管理担当者Darius Sit氏は、「Paradigmは、Telegramで行われていることを簡易化している」と説明している。
取引の円滑化を実現
DeribitのCOOであるMarius Jansen氏によれば、取引所を直接介さずに仮想通貨デリバティブの大口取引ができるのは、Paradigmが初めてだという。ブロックトレーディングと呼ばれる大量に売買する手法だ。一般的には株の売買で見られる取引方法だが、仮想通貨ではGeminiのような取引所での現物取引でしか行われていない。仮想通貨デリバティブで大口取引をすることを好まない投資家がいるからだ。
Jansen氏は「トレードやヘッジファンドを行う人は機能性を重視している。そういった投資家は、1つ1つ注文を入れなくはならないため、注文を入れている間に、他の投資家に取引で先を越されてしまうリスクを常に抱えている。これは大きな問題だ」と話す。
仮想通貨のOTC取引ができるGSR Marketsは、この問題を解決するためにParadigmを利用する企業の1つだ。SR Marketsを利用するトレーダーのJohn Kramer氏は、「Paradigmは、ボラティリティを利用した取引を円滑かつ効率的に行える。仮想通貨のオプション取引市場の流動性を高めて活性化するための大きな一歩になる」と語っている。
Paradigmの今後
Paradigmは現在、オプション取引や先物取引において、Deribitにしかプラットフォームを提供していない。しかし今後は、他のデリバティブ商品や現物取引も行えるようにしたいとGomes氏は意欲を示した。
また、「Paradigmは前例を提示することができるだろう。いったん情報が知れ渡れば、他の取引所も興味を示すはずだ。そして、取引高が増加すれば、他の取引所も真似をする」とも説明している。
Jansen氏によると、仮想通貨オプション取引の全出来高の約95%がDeribitによるものだという。この支配率は、仮想通貨デリバティブ市場において圧倒的な数字だ。一方で、オプション取引を含め独自の仮想通貨商品を扱い始めるヘッジファンドや投資会社が登場すると、ライバルができて市場が過熱する。
仮想通貨デリバティブを扱うLedgerXも、米商品先物取引委員会(CFTC)の認可を取得し、2017年から米国の機関投資家にオプション取引を提供している。
しかしJansen氏は、他の取引所がオプション取引を始めるのを楽しみにしているという。「大きな取引所がオプション取引を始めれば、顧客も知識を得て、我々の利益にもなる」と楽観的な姿勢を示した。