ビットコイン市場の流れを見る「大局観」 採掘難易度の底値がヒント
- ビットコインと採掘難易度
- ビットコイン急落後の反発ポイント時に、採掘難易度関連指標が同水準で底値を示していたとの指摘が行われた。仮想通貨市場の大局観に活用の可能性は?
マイニング難易度からみるビットコイン市場の大局観
非常に高いボラリティで知られる仮想通貨市場だが、一方で周期的変動も観測されてきた。
仮想通貨アナリスト達は、それぞれの周期が続く長さ、そして市場を動かす要因を予測するために様々なツールや要素を用いて分析する。
移動平均やドミナンスなど、仮想通貨の市場でもこれまで複数の指標が、市場の予測ツールとして活用されてきたが、業界特有のマイニングのデータを用いた予想が再び海外で注目されている。
仮想通貨研究者の「PlanB」は、マイニングデータのなかでも、マイナーの採掘コストに影響する採掘難易度がビットコイン(BTC)価格を予測するための指標になる可能性があるとみている。
採掘難易度の底とビットコイン価格周期の関連性
「PlanB」によると、ビットコインの歴史上で3回あった主な強気相場はすべて、マイニング(採掘)の難易度が底に達した後に開始しており、その点から予測すると、今年の市場は堅実な成長を遂げることができるという。
After each ATH #bitcoin price drops until a lot of miners aren't profitable. Miners switch off hardware (capitulate), hashrate drops, and difficulty adjusts downwards .. until miners become profitable again and difficulty rises. Difficulty bottom (100%) starts a new bull marketpic.twitter.com/IgriE3GkPq
— PlanB (@100trillionUSD) August 21, 2019
過去の強気相場では、ATH(※ All Time Highの略で、過去最高値の意。)が更新された後に、価格が急下落したことで、マイナーの大半が利益を出せないラインまで下落していたことを指摘。利益継続を厳しいと見るマイナーの淘汰などを背景に、ハッシュレートも大きく下落する。
ハッシュレートが下落することは、難易度の調整タイミングで、採掘難易度が適正値に変更されることとなるが、一定水準まで断続的な下落が発生することで、難易度の底値(利益が出せる水準まで落ちること)に達することがこれまでにも見られたと指摘する。この難易度の底値が、市場価格における底値と相関を示していると見ているという。
基本的に価格が先行するため、ハッシュレートは市場の先行指標にはなり得ないが、大局を見る上で、ネットワークのセキュリティを維持するマイナーの存在とその動向は、仮想通貨特有の相場指標になり得るとの見方だ。
ビットコイン価格が上昇し、採掘競争が激化すると、マイニングの基準値が大きく上昇し、それまで利用していたハードウェアの運転では利益が回収しづらい状況に陥る。大手マイナーは、日々採掘効率の向上を図り、先進的なマイニング環境を整えているが、競争スピードの速さと、収益の要となる価格のボラティリティの高さから、安定化には程遠い状況にある。
最新マシンの導入タイミングも一つのポイントになるが、市場急落のポイントが、最も影響を及ぼしやすく、ハッシュレートの下落に伴い、承認遅延や、マイナーの利益確保に伴う通貨売りは、市場の警戒指標になり得ていたため、難易度の底が、大局の転換ポイントになるとの指摘は、相関性がある可能性は十分にある。
今回示されたデータでは、収益ポイントの基準となる100%の基準で市場が転換ポイントを迎えていることを示している。
過去10年間の間、ビットコインの採掘難易度が最低になるポイントは、シェアされたグラフを見ると、採掘難易度の底は、2012年始め、2015年の第2四半期、そして2018年末に位置している。
このグラフからは、難易度の下落が、3-4年周期、または採掘難易度の底が観測されてからおおよそ2万ブロック後に訪れることも伺える。
こうした周期が今後も繰り返される保証はなく、ハッシュレート値が増加することでの、難易度のイフレーション値は右肩さがりに推移しているも、市場価格の上昇余地はあると見ることもできる。
「PlanB」のtweetの返答では、このことを踏まえて昨年、採掘難易度が底に達した際のビットコイン価格は3,500ドル(約37万円)周辺だったことから、今後数年で、ビットコイン価格が35,000ドル(約370万円)から75,000ドル(約790万円)辺りが、次の警戒ポイントに当たるのではないか、と予想した。
ただ、あくまでも難易度の調整は、市場価格が下落することやハッシュレートが下落することで起こる調整であり、市場の先行指標にはなり得ない。大局を読む上で、マイナーの収益性から予想する指標の一つにしかならないだろう。
ビットコインの全採掘収益は140億ドルを突破
Coin Metricsのデータによると、Bitcoinマイニングにおける収益額の合計は140億ドル(約1兆4800億円)を突破した。
ビットコインのハッシュレートは、相場が急騰した2017年末と同じように、爆発的な増加傾向にある。
2018年始めは、15EH/s(一秒あたり15回)の計算速度だったが、同年9月には一秒あたり60EH/sにまで上昇した。さらにここ数か月でハッシュレートは過去最高値を更新している。今年8月9日には80EH/sに達し、2019年の最低水準である36EH/sから2倍以上にハッシュレートが増加した。
ハッシュレートが増加する中、採掘による収益も高い上昇率を示している。しかし、ハッシュレートの増加傾向も、価格推移次第では、一定の調整ポイントを迎えるかもしれない。
ハッシュレートは右肩上がりに推移する一方で、価格が下落することで収益性が右肩さがりに低下し、リターンリバーサルの現象が確認されたポイントは特に、注意ポイントとなりそうだ。